
解雇の争い方 |
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| 解雇の争い方 |
| 解雇を争う前に、最初に確認するのは、本当に解雇されたのかということです。 上司は、「明日から会社に来なくてもいい」とだけ言ったのに、労働者の方が解雇されたと思い込んでしまうことがあります。労働者が、会社に解雇された言うと、会社は、労働者は勝手に来なくなっただけだと返答することが考えられます。 そので、会社からはっきりと「解雇する」と言われたのか、状況を思い出します。 |
| 一度、出社して、会社側の「解雇したのになぜ来たのか」などの反応を確かめることができます。 ただ、かなり勇気が必要な場合もあります。このような場合、「上司ともめたので出社できない」「パワハラを受けて職場にいけない」などの通知を送ることも一つの方法です。後に争う可能性を考えて、内容証明郵便を利用するのがよいと思います。 |
| 解雇されたことがはっきりしているのであれば、解雇理由証明書の交付を求めます(労働基準法22条)。会社には求めに応じる義務があります。理由書に簡単な記載しかなされておらず、具体的でない場合は何度でも交付を求めます。記載された内容を元に争うことになるので重要です。 この時、弁護士のような専門家から取り寄せるように言われたと会社に伝えると、会社側は構えてしまい、防御態勢に入るので、個人として請求することも一つの方法です。 |
| 証拠は時間とともに散逸して、集めるのが困難になります。できる限り早いうちに取り掛かるのが賢明です。 どの手続を用いて解決を計るとしても、同じように証拠は必要となります。迅速さが特徴な手続きの場合は、最初に一気に証拠を提示することになりますので、手続を開始する前の段階からできるだけの資料を収集するようにします。
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| これらの金銭を受け取ることで、自ら解雇を認めてしまうことにならないか心配になる事があります。 こうした場合、これらを、解雇が無効であり、給与として受け取ったとして主張することになります。 |
| 仮に解雇が無効となって、元の労働者の地位を取り戻したとしても、職場の環境が変わるわけではありません。解雇を言い渡した上司もいることでしょう。労働者は、元の職場ではもう働きたくないと感じているケースも少なくありません。 そこで、解雇を争うにあたっては、同じ職場に復帰することを希望しているのか、それとも復帰は望まずに金銭で解決するのかを選択することになります。争いの最終目標を設定して方針を決めます。 |
| 収入のない間も生活のための費用が必要です。しかし失業保険を受け取ると、解雇を争っている態度と矛盾しているとみられるおそれがあります。 このような場合、解雇を争っているときに受け取ることのできる仮給付を受けることを検討できます。 解雇を争っていることを示す書類(内容証明郵便、仮処分申立書、訴状、労働審判申立書、あっせん手続申請書など)を提出します。解雇無効が認められて賃金の支払を受けた時に、基本手当を返還する誓約書を同封します。 |
| 解雇無効を争っていながら、別の仕事を見つけて実際に働くことは、矛盾した行為になるかが問題となります。 会社が解雇をしたと主張しているのであれば、それは会社側が、労働者による労務を受け入れる意思がないことを明確に示していることになります(不受領意思明確)。この場合でも会社で働く意思があること(労務提供の意思)と、働く能力があることは必要です。 何らかの仕事をしなければ生きていけないわけですから、別の仕事を見つけて実際に働いただけで、相手会社で働く意思と能力が失われたということはできません。ただ、労働の意思があることをあらかじめ訴状などで主張しておくことは望ましいと考えられます。 もっとも、別の職場を見つけたことが、心機一転して新たな職場での仕事を開始するためのものと見られた場合は(例えば新しい仕事のために資格を取得した、勤務時間や条件が前の会社と比べて逸色ないなど)就労の意思を失ったと見られるおそれが否定できません。 また、別の仕事で得た収入(中間収入)が、請求している賃金から控除される可能性もあります。 こうした要素を考えたうえで、別の仕事をするか否かを検討するのか賢明です。 |
| 争う手段 |
| 労働組合がある場合は、組合に相談して支援を受けることができます。労働組合は、解雇の無効を主張し、労使交渉を行うことができます。また、労働組合は法律や労働条件についての専門知識を持っており、適切なアドバイスを提供してくれます。 |
| 労働基準監督署は、不当解雇に関する問題を扱う公的機関です。解雇が労働基準法に違反している場合、労働基準監督署に相談して是正を求めることができます。 労働基準監督署は、企業に対して是正指導を行うことができます。 |
| 労働局は、不当解雇に関するあっせんを行います。労働局の斡旋員が労働者と使用者の間に入り、話し合いを通じて解決を図ります。 斡旋は、労使間の紛争を円満に解決するための手段です。 都道府県の労働委員会。労働局の紛争調整委員会にあっせんを申請します。 労働局の斡旋は無料で利用できます。 強制力がない。あっせんの場はあくまでも話合による解決であり、債務名義とならず強制力がありません。 短期間で判断されるため、迅速な解決を計ることができます。 会社は不参加という選択ができます。参加しなかったことによって、何か不利益な処分になることはありませんが、労働審判の申し立てには申し立てに至る経緯が記載されますので、会社が不誠実であるという評価を受ける可能性があります。またあっせんの場で解決を計ることによって余計な労力を避けることになる場合があります。あっせんは短期間で終わります。そのため労働者側もありとあらゆる武器を駆使する間がそれほどありません。会社にとって不利な要素が多いと感じたら、裁判で細かく審議され、多額の金銭の支払を余儀なくされるよりは、会社側としては、あっせんの機会を利用して、労働者と比較的低額での交渉を試みるのも手です。一方労働者側としては、しっかりと争いたい場合は、審判や裁判を利用することも考える余地があります。 |
| 労働審判は、裁判所で事業主と労働者の間に生じた労働問題を扱います。 労働審判制度は、迅速かつ簡易に労働紛争を解決するための制度です。 労働審判は、裁判官(労働審判官)1名と、民間から選任される労働審判員2名からなる「労働審判委員会」によって扱われます。労働審判員は労働問題の実情に精通した専門家から選ばれますので、より現実的な事情を踏まえた、融通性の高い解決を期待できます。 労働審判は通常、申立てから3か月以内に結論が出ることが多いです(申し立て事件の3分の2くらい)。 申し立てから40日以内の日に1回目の期日が指定され、呼出状が送られます。相手方は答弁書を提出することになります。 労働審判への不出頭には、5万円の罰金の制裁があり、不利な審判がくだされることになります。 基本的に3回の期日で終了します。そのため最初の1回目で全ての主張と証拠を提出し、2回目にはもう調停案に向けた検討になることも多く迅速に進みます。ただし、複雑な問題の解決とは相性が悪いです。 テレビ会議を利用した審判について 調停案に対して当事者が拒否をした場合、審判委員会が、心証に基づいた審判をすることになります。 労働審判の結果に納得できない場合は2週間以内に異議申し立てを行い、訴訟に移行することができます。 注意点 労働審判を申し立てた場合、労働者には金銭解決を受け入れる余地があるとして受け取られる場合があるため、復職を希望している場合は訴訟の方が良い場合もあります。 裁判よりも請求金額が減額されることが多いといえます。 |
| 不当解雇を争うための仮処分(労働契約上の権利を有する地位保全のための仮処分)と(賃金仮払いの仮処分)は、解雇された労働者が解雇の無効を争い、訴訟が終了するまでの間、解雇の効力を停止し、元の地位に戻ることを求めるための手続きです。 地位保全のための仮処分は、特段の事情(地位を保全しないと、国外退去になってしまう外国人や社宅から追い出されるなどの事情)がないと認められにくい可能性があります。 賃金仮払いの仮処分は、解雇の無効を争う訴訟の結論が出るまでの間、労働者が生活の安定を保つために重要な手段です。預貯金が余りないことや、収入が全くないことの資料を提出して、人並みの生活を送ることが難しいことを示し、保全の必要性を疎明します。 |
| 不当解雇の無効を求めるためには、裁判所に提訴することができます。裁判では、解雇が法律や労働契約に違反しているかどうかを判断します。 「労働契約上の権利を有する地位の確認の訴え」及び「賃金請求の訴え」を提起します。 慰謝料請求 解雇と言われた事に対して、精神的苦痛を受けたとして損害賠償請求ができるかが問題になります。 一般に、解雇された労働者が被る精神的苦痛は、解雇期間中の賃金が支払われることによって慰謝されるという判断が多く、賃金とは別の賠償が認められることは、解雇にあたり虚偽を用いたり、他の悪質といえるような解雇の場合にでなければ難しいと考えられます。 |